AGAの治療情報を探している際によく目にするのが「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」という言葉。日本皮膚科学会によって作成されるこのガイドラインは、AGAの標準的な治療方法を提示したもので「AGA治療の指針」とも呼ばれています。
今回は、AGA診療ガイドラインを作成した日本皮膚科学会の概要や、ガイドラインで推奨されている治療方法などについて詳しくお伝えします。
日本皮膚科学会とは?
日本皮膚科学会は、皮膚科学における医療や教育・研究についての連携を図ることを通じ、皮膚科学の普及や発展に貢献することを目的として活動する学術団体です。設立は明治33年(1900年)。
以後、皮膚科の教育・研究・診療に尽力し、皮膚科学分野の進歩と皮膚科における医療体制の形成、診断基準や治療に関するガイドラインの作成等に取り組んでいます。
また、研修会や学術大会の開催、論文や学会抄録・会報などが掲載された「日本皮膚科学会雑誌」の発行、国内外の論文などを掲載する「The Journal of Dermatology」の発行、「皮膚科専門医」の資格認定と資格更新といった事業も実施。国内だけでなく、「世界皮膚科学会連合」「国際研究皮膚科学会」をはじめとする団体とも連携し、ワールドワイドな情報交換や研究交流などにも勤しんでいます。
日本皮膚科学会が発表した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」とは?
「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン」は、日本皮膚科学会がAGAとFAGA治療における指針をまとめたものです。このガイドラインは、AGA治療の中に医療的な根拠に基づかない民間療法などが見受けられるようになったことを懸念し、科学的な根拠に裏付けされた情報を厳選して医師や患者さんにとってベースとなる治療方法を提示すると共に、AGAの診療水準をより向上させることを目的として作成されました。
最初に提示されたのは日本皮膚科学会および毛髪科学研究会が共同で作成した「日本皮膚科学会男性型脱毛症診療ガイドライン2010」ですが、2017年に第2版となる「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017」に改訂されており、今後も必要に応じて改訂される模様です。
なお、当ガイドラインは公開されており、誰でも自由に閲覧できます。
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
AGA診療のガイドラインで示されている「推奨度」とは?
「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」では、医療機関のトップや大学医学部で教鞭をとる教授といった皮膚科領域のプロフェッショナルが集い、科学的根拠を示すエビデンスを元にAGA治療を評価しています。評価のレベルは「推奨度」と表され、さらに「A 行うよう強く勧める」「B 行うよう勧める」「C1 行ってもよい」「C2 行わないほうがよい」「D 行うべきではない」の5段階に分類されています。
また、各治療方法における有用性や安全性などについても解説。なお上記の推奨度については、「有効度を表す科学的な根拠がより明確である」という評価によって分類されており、効果の高さを示すものではないとされています。
AGA診療のガイドラインで推奨されている治療薬について
上記で紹介したAGA治療の「推奨度」において、「A 行うよう強く勧める」と評価されたのは下記の治療方法です。
フィナステリドの内服
フィナステリドは、AGAを引き起こすとされるジヒドロテストステロン(DHT)の生成に関わる5α還元酵素のⅡ型を阻害する成分で、「プロペシア」や「フィナステリド錠」といった商品名で流通しています。女性は服用できません。
デュタステリドの内服
ジヒドロテストステロン(DHT)の生成に関わる5α還元酵素のⅠ型及びⅡ型を阻害する成分で、「ザガーロ」や「デュタステリド錠」として販売されています。女性の服用は不可となっています。
ミノキシジルの外用
ミノキシジルは毛包にダイレクトに働きかけて発毛を促す成分のことで、頭皮に流布する外用薬が推奨されています。男性だけでなく女性も使用できるのが特徴で、「リアップ」などの商品名で流通しています。なお、ミノキシジルの内服については有効性や危険性が充分に検証されていないことから「D 行うべきではない」と評価されています。
また、「B 行うよう勧める」と評価されているのは「植毛術(ただし女性の脱毛はC1(行わないほうがよい)、人工毛植毛は D(行うべきではない)と評価されています)」、「LED および低出力レーザー照射」「アデノシン外用」となっています。「C1 行ってもよい」と評価されているのは「カルプロニウム塩化物の外用」「t-フラバノンの外用」「サイトプリンおよびペンタデカンの外用」「ケトコナゾールの外用」「かつらの着用」となっています。
AGA治療の参考にガイドラインを活用しよう
AGA診療のガイドラインでは、推奨が難しいと評価されている治療方法もあります。例えば、「C2 行わないほうがよい」と評価されているのは「ビマトプロストおよびラタノプロストの外用」「成長因子導入および細胞移植療法」で、「D 行うべきではない」と評価されているのは「ミノキシジルの内服」です。
上記でも触れた通り、これらの推奨度は有効なエビデンスの有無を元に検証されたもので、効果の高さを示すものではないとされています。また当ガイドラインでは、「診療ガイドラインは個々の症例に応じて柔軟に使うものであって,医師の裁量権を規制し治療方針を限定するものではない」とも記載されていますが、治療方法ごとの推奨文や解説の内容を理解して、AGA治療を選ぶ際の参考として活用しましょう。
まとめ
日本皮膚科学会が作成したAGA診療ガイドラインは、医師だけでなく患者さんにとってもAGA治療についての理解を深める参考書になるといえるでしょう。ぜひ当ガイドラインを役立てて、自分に合うAGA治療を見つけてくださいね。